沼倉孝彦

沼倉孝彦(ぬまくらたかひこ:1953~)

系統:木地山系

師匠:井川武松(見取り)/佐藤達雄

弟子:

〔人物〕  昭和28年3月15日、旧秋田県雄勝郡雄勝町の父・沼倉孝造(神職)、毋・昭子長男として生まれる。
昭和46年秋田県立湯沢高等学校卒業後、東京都文京区で8年間会社勤務ののち帰郷、湯沢市内の印刷会社にて写真撮影とグラフィックデザインなどの業務に従事。
平成元年3月退社、グラフィックデザイナー兼フリーカメラマンを生業として独立、沼倉デザイン室を立ち上げ現在に至る。
昭和56年頃よりこけし蒐集を開始。
在京中は新型を集めていたが、帰郷後実家に伝統こけしが数本あり、そのシンプルさに心惹かれてのめり込むようになった。
こけし製作を志すようになったきっかけとして、〈こけしの里〉(西岡義治著・1979年、東北出版企画)で岩本芳蔵が自分のこけしを肴に酒を一杯引っ掛けている写真を見て、その情景に憧れたことを挙げている。
こけし製作は、当初、秋田県こけし展で実演をしている北山賢一に木地を依頼し、平成13年ころより趣味として描彩を開始した。
平成17年1月、北山賢一木地に描彩した習作を秋田こけし会例会に持ち込んだところ、会として頒布したいのでまとめて作れないかと会から持ちかけられ、同5月、小野寺正徳に木地を依頼し、5月例会にて初作(本人型・石蔵型)を頒布した。これがこけし描彩者としての出発となる。
平成19年秋、鈴木国蔵こけしに憧れて国蔵の弟子である井川武松に弟子入りするも、翌春に亡くなったため再び小野寺正徳に木地製作を依頼した。武松のところでは直接木地挽きまで教わることが出来なかったため、師弟関係についてはこれまで特に公にしなかった。
平成22年、東京こけし友の会より例会おみやげこけしの依頼があったのを契機に、川連町の知り合いから木地師佐藤達雄を紹介され、同年5月佐藤に弟子入りして木地挽きの修業を開始した。木地挽き初作となった3寸5分(泰一郎型・米吉型)60本を友の会に納めた。
以後、描彩と木地挽きを通して行う伝統こけし工人として製作を続けている。平成22年5月以後のこけしは全て自挽きである。
平成25年、皆瀬の高橋久宗工人の許可を得て小安こけしを継承、三春町歴史民俗資料館の許諾を得て、らっこコレクションの儀一郎型や湯の澤こけしも手がける。

グラフィックデザイン、フリーカメラマンとしての仕事があることから、こけしは川連町の佐藤達雄の工場まで出かけて頒布品や注文品を挽く程度で制作量は少ない。今後も当分は兼業での製作を予定している。

沼倉孝彦 平成29年11月

〔作品〕  平成17年1月の習作は北山賢一木地であるが、すでに玄人好みのする枯れた味わいのこけしで完成度が高い。秋田こけし会にて頒布の要望があったことも十分頷ける。
翌年から秋田県こけし展に出品するようになり、全国規模で販売をするようになったのは平成19年の鳴子こけし祭りからである。

]沼倉1703習作_1
〔18.3cm(平成17年1月)(沼倉孝彦蔵)〕習作・北山賢一木地

平成17年秋田こけし会頒布の初作や平成18年伊勢こけし会の頒布は小野寺正徳木地である。
いずれも会員頒布のため数量は限られている。
本人型は井川武松等、湯沢こけしの趣がある。

沼倉初作_1
〔18.0cm(平成17年4月)本人型:小野寺正徳木地、14.4cm(平成17年5月)石蔵型:小野寺正徳木地初作・秋田こけし会頒布(沼倉孝彦蔵)〕

沼倉H17-19_1
〔15.9cm(平成17年8月石蔵型)、19.5cm(平成18年4月12日)石蔵型:伊勢こけし会頒布、21.9cm(平成19年9月30日)泰一郎型 (沼倉孝彦蔵) 〕

平成22年の東京こけし友の会おみやげこけしより木地も自挽きとなる。

沼倉H22木地初作_1
〔10.5cm(平成22年5月19日)泰一郎型:木地挽き初作・東京こけし友の会おみやげこけし(沼倉孝彦蔵)〕

〔24cm(平成25年3月米吉型)、23.7cm(平成25年3月泰一郎型)、18cm(平成25年11月水野達弥型・東京こけし友の会頒布)〕(沼倉孝彦蔵)
〔24.0cm(平成25年3月米吉型)、23.7cm(平成25年3月泰一郎型)、18.0cm(平成25年11月)水野達弥型:東京こけし友の会頒布(沼倉孝彦蔵)〕

泰一郎の長男嘉市の型も作る。

〔18cm(平成26年5月18日)伊藤儀一郎型:東京こけし友の会頒布、12cm(平成26年9月26日)湯の澤型:秋田こけし会頒布(沼倉孝彦蔵)〕
〔18.0cm(平成26年5月18日)伊藤儀一郎型:東京こけし友の会頒布、12.0cm(平成26年9月26日)湯之澤型:秋田こけし会頒布(沼倉孝彦蔵)〕

初作、初期作の署名は「ゆざわ 沼倉」、以後平成21年まで「沼倉」、何れも筆書き。平成22年から現在まで「ぬまくら」のペン書き。小寸には「ぬ」だけのものもある。

〔伝統〕木地山系川連系列のこけしを製作する。復元を中心とした見取りであるが、描彩のみ一時期井川武松に師事した。木地の師匠である佐藤達雄は川連漆器等の盆・椀も挽きこなす木地師であるが、近年こけしも製作し、販売している。

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