宮城県登米市津山町横山。JR気仙沼線の陸前横山駅から徒歩10分。横山の大徳寺には保元時代に百済から渡来したと言われる不動尊が祭られていて、日本三大不動尊の一つになっている。この不動尊参詣のおみやげにこけしが作られていたことがある。作者は佐藤善七、製作年代は明治中期と思われる。師の伊藤仁蔵も横山でこけしを作り、付近の農家や志津川・登米のお祭りに売りに出したという。仁蔵の戸籍を追求したが、横山の役場にはなく、おそらく他から漂移した木地師であろう。佐藤善七の妻「ちゑ」は玉造郡岩出山村(戸籍表記では岩手山)伊藤七兵衛長女で文久2年12月25日生。したがって仁蔵との血縁関係が期待でき、岩出山町役場に依頼したが、七兵衛の戸籍が発見できず、この調査は未解決で残されている。深沢コレクションに残る善七は、赤と黒のみ使用した創成期の鳴子の型を伝えている。したがって鳴子からの分化年代は古く、一ノ関の宮本惣助と同列である。一般に鳴子の湯治客は本吉郡東部や登米郡の農家の人々が多く、鳴子こけしが最も大量に流入した地方の一つとして注目すべきである。仁蔵の移住および仁蔵・善七のこけし製作には、こうした経済流通の背景があったと思われる。
宮城県登米市津山町横山本町3