稲毛豊

稲毛豊(いなげゆたか:1929~1985)

系統:土湯系

師匠:渡辺喜平

弟子:

〔人物〕 昭和4年2月19日、福島県飯坂の会社員稲毛常次郎の長男として生まれる。もともとは板前として働いていたようであるが、家が近所であったこともあり、喜平のもとへ行って弟子入りを頼んだ。昭和47年5月に渡辺喜平に弟子入りし木地の修業を始めた。同年7月頃よりこけしの製作も開始した。昭和49年秋に独立、自宅で本格的に木地を挽くようになった。この頃から鯖湖の古品復元を依頼され試みるようになったが、描線柔らかく、対象の把握も的確であって、キンの筆致を十分に再現することが出来た。最良の鯖湖型作者とみなされるようになったが、昭和60年2月ころより、肝臓の不調により入院加療を続けたが、昭和60年4月6日、数え年57歳の若さで亡くなったのは極めて惜しまれる。

描彩する稲毛豊(昭和51年)

稲毛豊 こけし三十人展実演会場

稲毛豊 昭和59年頃 撮影:金子典治

〔作品〕 昭和50年から53年頃、鹿間、久松、植木蔵の鯖湖古品を次々に復元したが、それぞれが現物の雰囲気をよく表現した佳品であった。昭和55年1月に開催された「こけし古作と写し展」では久松蔵三つ爪の7寸(胴底に鯖湖独特の三つ爪のあとが残る大正期のもの)を復元出品した。

左より〔20.8cm 鹿間蔵品復元、15.1cm、16.3cm、21.7cm 久松蔵品復元 (昭和51~52年頃)(橋本正明)〕

左より〔20.8cm 鹿間蔵品復元、15.1cm、16.3cm、21.7cm 久松蔵品復元
(昭和51~52年頃)(橋本正明)〕

右端が久松蔵三つ爪7寸の復元であるが、これは写し展の前に製作したもの。「キンの描いた鯖湖こけしの雰囲気を十分に再現した、特に表情の張りと艶は見事」と高く評価された。

〔伝統〕 土湯系鯖湖亜系

〔参考〕

  • 伊藤孝:稲毛豊の憶い出〈こけし手帖・295〉(昭和60年10月)
  • 稲毛敏夫:稲毛豊 こけし図録(昭和63年1月)

    稲毛豊 こけし図録

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