渡辺等(わたなべひとし:1923~1982)
系統:土湯系
師匠:斎藤弘道/西山憲一
弟子:渡辺定巳/渡辺隆/阿部新一
〔人物〕 大正12年2月10日、福島県土湯温泉上ノ町農業渡辺治作、イクの五男に生まれる。渡辺定巳は兄。昭和12年土湯尋常小学校を卒業後、土産物店さかえやを経営。昭和41年12月より一年間斎藤弘道と西山憲一について木地を学んだ。こけしも当初より製作、自分の店に並べた。また兄の渡辺定巳に木地を教えた。昭和50年に福島の阿部新一が弟子入りし、こけし製作を学んだ。昭和56年からは娘美紀子の婿隆が等について木地修業を始めた。
昭和57年9月2日没、行年60歳。小柄で柔和な正確だった。
〔作品〕 おそらく福島の佐久間貞義の勧めによりこけしの製作を始めたのではないかと思われる。下に掲げる写真のこけしは昭和42年1月19日の作で、木地を学び始めて間もない作である。佐久間貞義は昭和42年1月29日の東京こけし友の会の新年例会にこのこけしを持参して新人として紹介し、その席で「渡辺等のこけし第1作は昭和41年12月28日に作られた」と語っていた。
〔22.5cm(昭和42年1月19日)(橋本正明)〕 佐久間貞義よりほぼ初作として紹介されたもの
渡辺等のこけしは、際立った個性はないが、落ち着いて安定した作風である。当時の土湯では安心して見られるこけしの一つであった。
昭和45年頃、佐久間貞義の勧めで阿部治助型を作ったこともあった。〈ふくしまのこけし〉にその作例が載る。その影響で、眼はやや鯨眼風になった。
〔系統〕 土湯系一般型であるが、伝統の基本はきちんと押さえていた。