土湯名産の栞

大正12年に斎藤太治郎が土湯上ノ町に移って、こけし製作を再開したときに作成して、店に製品を買いに来る湯治客に配った栞。正式には「土湯名産実ニ御目出度挽地玩具ノ福音」という。こけしや木地玩具がいかなるものとして商われていたかが分かる貴重な史料である。
こけしは子授けを願うもの、健勝な子供の養育を願う物であることが強調されている。

斎藤太治郎

斎藤太治郎

全文は以下の通り。

当村ハ聖徳太子様(当村ニ鎮座シ給フ)ノ御夢想ノ霊湯デ効能ノ名高イ事ハ御客様方ノ嘗テ御承知アラルヽ事デアリマスガ殊ニスグレテ名高イ効能ハ昔カラノ子授ケノ名湯 ト汎ク天下ニ賞讃セラルヽ事デアリマス。傍ラ御客様ノ御贔屓ヲ蒙りお蔭様ニ依り繁盛 致シテ居ル当村ノ名産挽地細エハ多クノ茶器類ト玩具類デアリマスガ中ニモ「木人形」「臼」「独楽」類ハ御子様方ノ御幸運ト御健勝ヲ祝シタ真ニ御目出度イ玩具デアルト昔カラ言ヒ伝ヘテ居ルノデアリマス。此ノ玩具ヲ与ヘテ喜ブ笑顔ヲ楽シミトスル御子様ノ無キ御方ハ当温泉二御入浴ヲナシ御太子様ト御湯神様(当行ニ鎮座シ給フ)ヲ一心ニ信仰ノ上右ノ木人形ヲ御祭リシテ朝夕御信仰ナサレバ玉ノ様ナ可愛イ御子様ヲ御設ケニナリマス。又身体ノ御弱イ御子様ヲ持チタル御方ハ右ノ通り御信仰ナサレバ御子様ハ大壮健ニ御成育ナサルノデアリマス。次ニ「臼ト独楽」ハ御子様ガ「臼」ノ如ク肥ヒ太リ御祝日ノ御目出度イ御餅ヲ搗カレル様ニ力持ニナリテ独楽ノ如ク威勢ヨククルクルト愉快ニ身体ノ運動ヲ取リ学校モ好成績ニ独楽ノ廻ル如ク進級セラルル事フ意味シテ御子様方ノ御幸運ト御壮健トヲ祝シタノデアルト云ヒテ居リマス。故ニ毎年御人浴ノ御客様方ハ必ズ「右ノ木人形、臼、独楽」類ヲ御土産トシテ御買求メニナリ御帰宅後御親戚二御配リニナルノデ御親戚ハ楽シク皆悦ンデ御受ケナサルガ或ハ他品ヲ御配リニナレバ土湯土産ニアラズト迄称セラルヽノデアリマス。又湯治ノ御客様ハ此ノ土地デ出来タ玩具類ハ殊ニ珍ラシク御愛シナサルノデ当地ノ所産物トシテ御子様方ノ御幸運ト御健勝ヲ祝福申上ゲタ実ニ目出度イ挽地玩具デアリマス。
右ハ昔カラノ伝説デアリマス

 福島県信夫郡土湯村字上ノ町六八
挽地細工店 斎藤 太治郎

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