岩附義正(いわつきよしまさ:1948~)
系統:土湯系
師匠:渡邊和夫
弟子:
〔人物〕 昭和23年6月25日、埼玉県草加市岩附五郎の長男に生まれる。本名は政美。実家は鉄工所経営。将来は工場を継がせるため、親は機械技術を学ぶことを勧めたので、日大一中、日大一高を経て日大理工学部に進み機械工学を学んだ。しかし卒業直後にオイルショックがあり、その影響で鉄工所の経営も先行きが不透明になったので、東京都の教員資格を得て中学の技術科教諭となった。都内各所の中学で技術科教師を歴任し、また依頼されて筑波大駒場中の技術(電気)の授業を受け持った。
教員時代の仲間に山形出身の教員がいて、しばしば職場旅行で東北に行く機会があり、東北の鄙びた湯治場で売られている素朴なこけしに興味を持ち、こけしを製作するようになった。
もともと機械科なので旋盤の技術は持っていたが、ロクロによるこけし製作は、昭和58年頃に土湯の渡邊和夫の指導を受けてからである。
平成17年9月、東京のひやねで渡邊和夫と弟子たちの湊屋系展覧即売会があったが、その直後に、師匠の渡邊和夫が事故により急逝した。平成21年3月に定年退職してから、本格的にこけしを作るようになり製作数も増えた。
教員生活では、やがて竜泉中学、滝野川中、豊島北中、明桜中学などで校長を務め、また全日本中学校技術・家庭科研究会会長を務めた。平成19年度には東京都のものづくり・産業振興への貢献を評価され、(財)産業教育振興中央会より「中学校技術・家庭科教育功労表彰」を受けている。
現在は、草加市の自宅にロクロを据えて、こけしを製作している。ロクロは川俣の二代目虎吉が長く使用していたものを譲り受けた。こけし作者としては岩附義正を名乗る。
〔作品〕 渡邊和夫(二代目浅之助)に就いたので湊屋系列のこけしを製作する。下掲写真右端は昭和62年の作で、極初期に近い作品。左端は平成2年、川俣の佐久間虎吉の型であり、良い時期の虎吉の気品ある張りをよく表現している。
〔右より 16.2cm(昭和62年)、19.5cm(平成2年)(高井佐寿)〕 左:虎吉型
下掲は平成27年の作、左の佐久間粂松(23.6cm 岩附蔵)を復元したもの。
湊屋やそれに繋がる山根屋の手法を取り入れ工夫しながら、面白い作品を作っている。
〔右より 10.2cm、10.2cm(平成26年9月)、10.2cm(平成26年1月)(橋本正明)〕
〔18.6cm(平成28年7月)(橋本正明)〕 佐久間米吉型
下掲は平成30年の作、湊屋由吉の作風を取り入れ工夫して製作したこけし。
〔17.3cm(平成30年9月)(橋本正明)〕東京こけし友の会頒布
なお、師匠の渡邊和夫が、川俣の人から「川俣で亡くなった根本与市のこけしが廃絶しているのは惜しいから復元を作って欲しい」と頼まれたことがある。和夫が作るわけにいかないので岩附義正にこの依頼を回し、義正は根本与市型(弥治郎系)を30本ほど作ったことがある。
〔系統〕 土湯系湊屋系列
〔参考〕