こけしの用材の一つ。和名はエゴノキ(学名 Styrax japonica)。
エゴノキ科の落葉小高木である。北海道~九州・沖縄まで、日本全国の雑木林に多く見られる。5~6月に、その年にのびた短い側枝の先に1~4個の白い花を付ける。
和名のエゴノキは、果実を口に入れると喉や舌を刺激してえぐい(えごい)ことに由来する。ずさのき、ジシャ(萵苣)、チシャノキ(萵苣の木)、ちさの木(萵苣の木)、ロクロギ(轆轤木)とも呼ばれる。チシャノキは、実の成りかたを動物の乳に見立てた、乳成り(チナリ)ノキから転化したとされる。ロクロギ(轆轤木)はこの木の材をロクロで細工して、おもちゃなどを作ったところからの呼び名、あるいは傘のロクロに使われたためだという。こけし産地では「じしゃのき」と呼ばれることが多い。
佐藤友晴著の〈蔵王東麓の木地業とこけし〉では、用材として使うが使い良い木ではないと書かれている。遠刈田近辺ではあまり大木にならず、隠れた節も多いので、無駄になる部分が多く出るかららしい。しかし、陰干しにして中干しくらいのものを用いると「挽いても工具の切れ味も一段とよく、丹念に仕上げたその黄白色の滲みのないあぶらこい味わいは、どうして捨て難い趣がある」と書いている。